蓼科生活Vol.10 薪ストーブが恋しくて。”
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薪ストーブは家の中でできる焚き火。部屋を暖めると同時に調理器具にもなり、冬の食卓を温もり豊かに演出する

「ゆらめく炎を眺めながらワインを飲むのが夢だった」などと、
別荘購入のきっかけになるほど人気の高い薪ストーブ。
赤々と燃える炎の前でくつろぐ至福の時を求めて、真冬でも週末の度に来荘するオーナーが多い。
身体を暖め、心を癒やし、さらには食欲も満たす、薪ストーブのある生活を紹介しましょう。

 蓼科に到着すると、ダウンジャケットもニット帽も脱ぐことなく、まずは薪ストーブの前に座るのが冬のルーティンになっている。焚き付け用の松ぼっくりや白樺の皮などを炉内に組み、マッチで着火。炎が広がり始めたら割り箸くらいの薪を入れて炎を受け渡し、徐々に太い薪を加えて火力を増していく。

焚きはじめは、脂分が多いカラマツなどの針葉樹の薪を使うと着火しやすい

 スイッチを入れるとすぐに温風が吹き出るエアコンのようにはいかないが、パチパチと薪がはぜる音は冷え切った部屋にやさしく響き、張り詰めた空気が少しずつ和らいでいく。火入れの時間は、いつもわくわくする。
 暮らしの中にかまどや囲炉裏があった昔と違い、現代の家で薪をくべて火を燃やすことは特別なこと。ゆらめく炎を眺めているだけで気持ちがほぐれ、心の底から落ち着ける。遙か太古の時代から火を焚いてきた人類のDNAが呼び覚まされるのだろうか。

煙突から昇る白い煙は、蓼科の冬の風物詩

炎が安定してきたら、ナラなどの薪を使うと火が長持ちする

 また家の中で薪を燃やすという非日常的な楽しみはもちろん、薪の炎で暖められたストーブ本体から放射される遠赤外線効果は、薪ストーブならではの魅力。床や壁、天井に熱が浸透し長く留まり、じんわりと染み渡るような暖かさが味わえる。
 一度部屋を暖めてしまうと熱が逃げないため、夜寝る前に太めの薪を1本くべておくだけで朝まで暖かい。ほっこりとやわらかい温もりに包まれた部屋で迎える朝は、格別だ。
 温泉に入ったように身体の芯までポカポカ暖まり、雪が降り積もる室外に出ても、寒さがさほど気にならなかったりする。

1ヶ月の薪の使用量はおよそ1立方メートル、
一冬分ストックしておくと安心だ

薪ストーブは身体の芯を暖めるので、
外に出てもポカポカ感が持続する

 そんな薪ストーブの遠赤外線効果は、暖房だけでなく料理においてもいかんなく発揮される。薪火の中にアルミホイルで包んだサツマイモやジャガイモを入れておくだけで、ホクホクで甘い焼き芋の出来あがり。石焼き芋顔負けだ。
 遠赤外線効果による美味しい料理に魅せられる薪ストーブの専門家も多く、茅野市北山にある薪ストーブ専門店[ストーブ生活]の岡田さんは、スタッフや仲間と色々なメニューにトライしている。

アルミホイルで包んだサツマイモを薪火の中へ

20分から30分で甘味たっぷり焼き芋が出来上がる

チーズのとろみ・レモンの酸味・ハチミツの甘味が絶妙な味わいを生むオリジナルピザ。デザートにもぴったり

 「ロースト、ボイル、スモークなど、薪ストーブではあらゆる料理が可能で、なかでも薪ストーブの放射熱の効果を最も実感できるのがピザ。石窯で焼いたような本格ピザの美味しさが手軽に味わえます。」と岡田さん。ショールームで実演してもらったところ、表面はカリッとしてこんがり、中はもっちり。この食感は、まさしく石窯焼きのピザそのもの。チーズの濃厚な風味が生地を包み、実にうまい。

香ばしくもっちりと焼き上がったマルゲリータ。
ジューシーなトマト、モッツァレラチーズの優しい味わい、爽やかなバジルの香りが食欲をそそる

 薪ストーブで料理というと難しそうなイメージがあるが、燃焼室の中にゴトク(クッキングスタンド)を置いて、鋳物のフライパンや鍋を使えば手軽にオーブン料理が楽しめる。
 薪ストーブのトップでは、シチューやポトフなどじっくり煮込む料理が作れる。肉も野菜も煮崩れしないでとろけるように柔らかい。お米も20分ほどで炊けるそうで、もっちりとした甘みのあるご飯はまるでかまど炊きのように美味しいという。

燃焼室内にゴトク(クッキングスタンド)を置くと、直火グリルとして活用できる

薪ストーブの熱を利用するトップでは、
光熱費を気にせず長時間火にかけておける

遠赤外線でじっくり煮込んだ野菜は旨みが溶け出し、
味付けは塩コショウだけで充分うまい

 「仲間内でパーティーするときは、全部薪ストーブで料理しています。ダッチオーブンを使ったローストチキンは、皮はパリッパリッのカリッカリッで中はふんわりジューシー。これ以上は無いって言うくらい美味しくできます。」と岡田さん。
 料理を本格的に楽しみたい方には、燃焼室とは別にオーブンの付いている“クッキングストーブ”がおすすめ。安定した火加減で均等に熱が入るので、極上のローストビーフやパンなどができるそうだ。

上部が燃焼室、下部がオーブン室になっている暖房兼調理用の
クッキングストーブ。天板部分はホットプレートとして使える

ショールームで薪ストーブ料理を実演しながら
教えてくれた岡田さん

煙突部分に後付けできるオーブンもある。
排熱を利用して調理できる優れもの

 趣味的な楽しさはもとより、環境保全への意識の高まりと共に薪ストーブの人気は年々上昇し、薪の需要も増える一方。岡田さんが代表を務める[ストーブ生活]では、薪の製造・販売も行っており、薪割り部隊が秋から冬にかけてフル回転で供給しているとのこと。レクリエーション感覚で丸太から薪を作る人も多く、原木や斧の販売をはじめ、レンタル薪割り機・チェーンソーの貸し出しなど、薪作りを全面的にサポートしているとのこと。

レンタル用のエンジン式薪割り機。腰に負担をかけずに
素早く原木を割ることができる

高まる薪需要に対応できるよう、岡田さんは信州各地の
独自のルートで薪の原木を集めている

店内にディスプレイされた斧や薪ストーブ周りのグッズ。
見ているだけで楽しくなってくる

 心と身体を暖め、絶品の薪火料理も堪能できる薪ストーブは、その醍醐味を一度でも知ると離れられなくなる。ストーブライフの楽しさを広げてくれるサポート環境が整った蓼科高原で、薪ストーブを楽しまない手はないだろう。

取材協力

ストーブ生活 茅野店

TEL:0266-77-5733 FAX: 0266-78-2167

〒391-0212 長野県茅野市北山4355-1
e-mail:stove-seikatu@peach.plala.or.jp

薪ストーブの販売・施工から、ストーブアクセサリー、調理器具、薪の製造・販売・配達まで、薪ストーブライフをトータルでサポートしている[ストーブ生活]。薪ストーブの楽しさ、豊かさを、スタッフや仲間と実践しながら、提案している。

左/店長・岡田啓さん 右/宮澤恵梨子さん

薪ストーブご使用にあたって

・ 薪ストーブを安全に使用するには、定期的な煙突掃除をはじめ適切なメンテナンスが必要です。
・ 敷地内で薪づくりを行う際には、近隣の迷惑にならないよう別荘地の生活ルールに従ってください。