蓼科生活 Vol.17 遊ぶことは、生きること。
蓼科生活一覧 

15年間、毎月欠かすことなく来荘している片山さん。
楽しさが楽しさを呼び込む、遊び心あふれた蓼科生活に触れてみた。

南西傾斜の高台に建つ片山山荘。400坪超の広々とした敷地内に樹木が林立し、建物を包み込んでいる

10年越しの巡り逢い

 別荘購入にあたっては、時間をかけて様々な物件を比較検討するものだ。しかし、片山さんほどじっくりと腰を据えて検討した人は少ないのではないだろうか。軽井沢や箱根など名だたる別荘地はもちろん、北は仙台から南は伊豆まで、興味を抱いた物件をつぶさに見学してきた。「自分には海よりも、山の近くの方が向いている」と候補地を高原の別荘地に絞り、晴天率が高く乾燥した気候で、都心からのアクセスも良い八ヶ岳山麓を選んだ。

独自の審美眼で「チェルトの森」を選んだ片山光夫さん。
何年経っても俗化しない静寂な環境、ゆったりくつろげるプライベート感は、期待どおりだと語る

 地元の不動産業者の情報で『蓼科高原チェルトの森』を知り、早速現地を訪ねた時、別荘地入口から望む八ヶ岳連峰の雄大な景観に思わず目を奪われたという。観光地化していない静寂な環境、出入口が一箇所のみという安心感、400坪以上の広々とした敷地面積は、片山さんの選択条件をほぼ満たしていた。

片山さんの心をつかんで離さない別荘地入口の景観。メインストリートの先にそびえる八ヶ岳を見る度に、心が躍るという

 その後『チェルトの森』へ足繁く通い販売中の土地をすべて見学。風を優しく和らげる森に囲まれ、プライバシーが保てる高台の理想的な土地に巡り逢った。土地探しを始めてからじつに10年以上もの歳月を要したという。
 「掃除も料理も自分がやる。山荘に来たときは何もしなくていい」と奥様に宣言。自分の手で管理が行き届くシンプルな山荘を新築し、家族や友人を招いた際には、ホスト役に徹しているという。

木の風合いを活かした山小屋テイストのリビングルーム。
一人でキレイに整理整頓できる面積は19坪ほどと言われており、お気に入りのアイテムを絶妙なバランスで配している

遊びをせんとや『りょうじんてい

 片山さんはかなり多趣味な人だ。フライフィッシング、山岳サイクリング、登山、スキー、モーターサイクル、キャンプツーリング、トライアルバイク、チェロ、料理…。山荘のいたるところに愛用しているアイテムが散りばめられ、趣味の広さ、深さが窺える。

山荘完成を記念して友人の書家が贈ってくれた「梁塵亭」の額。遊び心あふれる部屋を優しく微笑むように見守っている

薪ストーブは子供時代を過ごした家にあり、ぜひとも導入したかったもの。チェーンソーによる玉切り、鉈を使う薪割りを楽しんでいる

 玄関には、『梁塵亭(りょうじんてい)』の書が掲げられている。平安時代末期に後白河法皇が編纂した今様の歌謡集「梁塵秘抄」の中に『遊びをせんとや生れけむ 戯れせんとや生れけん 遊ぶ子供の声きけば我が身さえこそ動(ゆる)がるれ』とあり、その一文に感銘を受けた片山さんは、山荘を最高の遊び場と考え、『梁塵亭』と名付けたのだ。

80年前のロッドとは思えない素晴らしいコンディション。
ヤングの弟子であるボブ・サマーズがこのロッドを修理したとき、Prosperityという商品名が消えないように残している

美しく精緻なバンブーフライロッドを手に笑みがこぼれる片山さん。アメリカのロッド職人サマーズが修理した物を買ったという

冬も山荘をフル活用しており、かんじきやアイゼンなど
雪山用のグッズも充実している

専用棚に収められた多種多様なリール。
いい道具は、いい顔をしている

 思い立った時に好きなコトが好きなだけ楽しめるよう、長年愛用している道具を自宅からコツコツと運んだ部屋の中は、まさにマニア感涙の夢空間。例えば、釣り人にとって伝説的なロッドビルダーのポール・ヤングが手掛けた約80年前のバンブーフライロッド(竹竿)をはじめ、手作りの毛針、用途別のリールがデスク脇の棚に整然と並び、ロフトに目を向ければフルオーダーのアルプスクライマー(ツーリング用自転車)がディスプレイされている。

ロフトの梁に飾られたツーリング用自転車。
八ヶ岳越えの山岳サイクリングやキャンプツーリングの相棒として日本各地を駆け巡った

ツーリング車の名門アルプスのフレームに、
フランスやイタリアのヴィンテージパーツを組み合わせている

 遊び心はさらに弾み、寝具は登山やキャンプツーリングで使用している寝袋。日常生活を引き摺りがちなテレビやパソコンはもとより、電子レンジや電気炊飯器も置いていない。料理はダッチオーブンや50年以上愛用している調理器具を用い、ご飯は土鍋で炊いている。
 庭には仲間と一緒に組み上げた大谷石のグリルがあり、家族や友人とダイナミックなバーベキューで盛り上がるという。

大学時代を過ごしたカリフォルニアで使っていた鍋や鉄瓶などの調理器具が並ぶキッチン。食材はエコーライン沿いの「たてしな自由農園」で調達している

蓄熱性の高い大谷石を用いたバーベキューグリル。
250℃近くまで温度が上がるので、ピザは1分ほどで焼き上がる

楽しみ尽くす蓼科生活

 一人気ままに過ごすもよし。昔の同僚、友人、同好の士と語らうもよし。山荘を建ててからすでに15年、少なくとも毎月一度は来荘しているが、まだまだ楽しさは尽きないという。
 晴れた日の昼下がりには、カラマツにハンモックを引っかけ、ユラユラとうたた寝。ニジマスやイワナが餌を求めて飛び跳ねる夕暮れ時になると、釣り道具を手に槻の池へ。中央アルプスの向こうに沈む夕陽を眺めながらバンブーフライロッドを振り、魚たちと一勝負。釣れるに越したことはないが、静かな湖畔でアタリの感触を試しているだけでも充分だという。

別荘オーナーの憩いの場として親しまれている槻の池。水面をわたる風の涼しさは格別だ

槻の池を管理釣り場として活用している「チェルトの森」。
スキルアップに訪れる釣り人も多い

ニジマス・イワナ・ブラウントラウトなどが放流されており、
掛かり具合が確認できる

 10年越しの物件探しで巡り逢った土地。好きなことを思いのままに楽しむ山荘。片山さんの蓼科生活は、まさしく『梁塵亭』の名の如し。「遊ぶことは、生きること」そのものなのだ。